謹啓 ご健勝をお喜びいたします。
平成16年秋の叙勲をはからずも拝受することとなりましたが、これもみなさんの長い間のご指導ご後援の賜物と心より感謝申し上げます。
何かお礼と存じましたが、なかなか思いつかずこういうものとなりました。
自画像は最近自分の顔を描きながら喜怒哀楽で時々刻々変わることに気付かされているところです。みなさんを楽しませるような顔でなく申し訳ありません。こんな顔をする時もあるんだとごらんになっていただければと存じます。
もう一枚は金浦町の竹嶋潟というところの春の絵です。
白瀬南極探検隊記念館を町のどこに建てたらよいか南極越冬隊の村山雅美、楠宏両隊長さんに相談したことがありますが、結局この竹嶋潟周辺が選ばれましたが、両隊長さんもこの場所を愛されておられるようです。
次に東北人のよさというのは昔を振り返りながら現代に生きる私たちの切実感として取り上げてほしいという意味で書かせていただきました。
ではみなさんのアルバムとしてみなさんに少しでも使っていただけますならば望外の幸いです。
ではご健勝とご活躍を心よりお祈りいたし、お礼とさせていただきます。
敬白
平成16年12月
畠山 悟
佐々木三知夫 様
東北人のよさ
教師として振り返ってみて、忘れがたい感激をしたことが多くあるが、初対面の方々より、これ以上ないあたたかい接待を受けた私にとって誠に貴重な体験がある。それは東由利の八塩山のふもとでPTAの集まりがあったときだと思う。
別に特別なごちそうが出たわけでない。あの人々のいうにいわれないあたたかさはどうして生まれるのか、今でも不思議に思っている。
考えられることは八塩山という山で生活をしていると事実だけははっきりとしているのだから、そこでの生活で得た人間性であるということは間違いない。それはまさに自然との戦いであり、生活が苦しい程、人間同志の助け合い、結び合いの強さが必要となる。
そして八塩山でりっぱに生きていけるという自信を持つにいたることで、あのようなあたたかさを生むのかと思われる。そこに住む人たちの持つものは、辛抱とか、忍耐とか、思いやり、慎み、はじらいとか、日本人の美徳といわれるものだと思う。現在、日本人のなかに困ったことをしても律をもたない人間がふえて来ているといわれる。律とは自分に対してこういうことはしてはいけない。こうすべきだというようなものごとの是非、善悪、正邪を自分なりにきちんと見分ける力をいう。
東北地方のよさは、日本人としての美徳をもち、律をもつ人間を育んで来たところにあると思う。
西沢潤一先生(元東北大学学長)のお話を聞ける機会があった。資源のない日本は、新しいものを作る頭脳と技能で生きていく外ないとのこと。新しいものを作る頭脳と技能は東北人はすぐれていると。東北人の最大のよさは失敗しても失敗してもくじけぬ忍耐力があるとのこと。そのことが新しいものを作る最大の武器になるというのである。
今こそ東北人のよさが、何によって生まれ育ってきたかを真剣に考えてみる必要があると思う。
(平成16年12月)
畠山悟画伯 日仏現代美術博 2003年秋
せ り か に ホームレスもどき 残雪鳥海
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