花は地球の合言葉 理事長 土井脩司
私たちが「花」を生涯のテーマとして選択したきっかけは、あのヴェトナム戦争にあります。
35年前、私と仲間たちは東南アジア学生親交団を結成し、平和を求めてヴェトナムを訪問しました。そしてそこで見たものは、戦争の悲惨さと大国のエゴイズム、そして平和の調停役としての日本の無力さでした。はちきれんばかりのやり切れなさを抱いて、5度、戦時下のヴェトナムに行った私は、戦火の中で、可憐に咲いている野の花に出会い、その仏のような姿に強く胸を打たれたのです。私は叫びました。「あらゆる兵器も戦車もミサイルイ砲も、みんな花でおおってしまえ!」
そうしたヴェトナムでの体験は、当時の仲間たちと「花の企画社」をつくり、また食うや食わずのなかで花の農場をつくる実践力につながっていきました。私たちが目指したのは単なる花いっぱい運動ではなく、愛と生命と平和のシンボルである「花」を人々の胸に甦らせ、農業を復権させ、地球の平和の基盤づくりをする運動であり、その運動もすでに三十年を数えます。また1986年には「花と緑の農芸財団」も発足しました。今は日本も物質面では豊かになり、徐々に普遍的なものとして「花の心」が理解される時代に移行しつつあるように思われます。それはまた、西洋近代化文明や都市化工業化に象徴される「鉄の時代」から自然と歴史を礎とした地方と文化の時代である「花の時代」への変動期とも言えるでしょう。
このような時代を前にして、私たちは何をすべきなのでしょうか。そもそも日本は豊かなる四季に恵まれた国であり、我々日本人は自然を愛し、その尊さを知る太陽民族であり農耕民族でありました。そんな私たちにして初めて成し得ることがあるはずです。
私たちが今、世界の人々に向かって提案しようとしているのは、「花」を通じての文化の創造と平和の増進なのです。「花は世界の共通語である」とも言われますが、それならば「花」を通じて、世界の人々と心を通じ合うことができます。また「花は無敵」とも言われます。それならば、あい争う人々の間に「花」を突きつけようではありませんか。
世界中で毎日東京23区と同じ広さの緑が失われ、それだけでなく私たちの心の緑も失われているなか、この花の事業は多くの人々が主体的にかかわり、支え守り、そして実行されてきました。メタモルフォシスとホロニクスが同時進行する今、花に共感する人と21世紀の地球社会のために、ともに「花」に学び、「花」から学んだすべてをこの社会に投げ出していけたらとひたすら念じています。
財団パンフレットより