ふるさと呑風便3月号
悪い人
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「悪い人ねえ」と婦長さんに叱られた。
四国・松山市のとある病院。もう30年も前の風来坊時代。病院の窓から見える松山の山々はミカン色。虫垂炎で入院し、オナラが出るようになったら、起きあがって、暇になる。閑人為不善。看護婦さんが検温に来た。体温計を毛布に擦り付けて40度ぐらいにして渡す。びっくりの若い看護婦さんが婦長さんを呼びにいった。いたずらばかりしていた私は目を付けられていた。その婦長さん、太い注射器を持って病室に現れた。
松山から東京。盲腸炎も直って参議院議員会館が職場となった。 赤坂見附の高速道路下を自転車で走る。大げさで言えば命がけ。坂を上って右に曲がり、左手の自民党本部を横目に議員会館の車庫の中に自転車を入れる。議員会館の玄関には剣道仲間の衛視さんがいるので秘書バッチをつけてなくてもフリーパス。部屋が7階。エレベーターの中でよくいたずらをした。満員のエレベーターの中で人形を持って音を出して知らんぷり。秋田出身のエレベーター嬢から悪い人と目で笑われた。
当時、参議院全国区に初登場したのが石原慎太郎氏、青島幸雄氏だった。議員会館の地下レストランで見かけるは慎太郎は背も高くて颯爽として、青島は何時も眠そうな顔をしていた。慎太郎には近寄りがたい。青島には「や、どうも」と話しかけたくなる感じだった。
参議院議員の私設秘書として、政治の社会の裏側にちょっといた。いたずら程度の悪さとは桁が違う悪い人が政官界にはいるようだ。もっと凄い悪者を知りたかったが、そんな人達をちょっと覗いた程度でふるさとに帰ってきた。
第一秘書の栗原文大氏からは、「大事なことは、義だ、ヒューマニズムだ」と教えられた。
秋田に帰って、敬愛する大学ゼミの杉山雅洋先輩から手紙で「司馬遼太郎の『坂の上の雲を読め』と言われた。それから司馬遼太郎に心酔してきた。司馬遼太郎さんの描いた歴史的人物の中で悪人らしきは「国盗り物語」の主人公の一人、斎藤道三といえようか。
京都の油売りが、陰謀一つで美濃の守護大名土岐家を乗っ取った。
私の好きな俳優、山谷初男さんは、国盗り物語の赤兵衛役だった。NHKの大河ドラマ「国盗り物語」で斎藤道三役が平幹二郎。その家来、赤兵衛役が山谷初男さん。平幹二郎に「赤兵衛」と呼ばれた時の、白黒テレビに写った不敵な顔の山谷初男さんを、今でも鮮明に覚えている。後年、ふるさと角館町に芝居小屋「はっぽん館」を建てた山谷さんにこのことを話したら、「よく覚えてくれました。あの赤兵衛役が私のデビューでした」といたずらっぽい顔でいわれた。
司馬遼太郎の小説の主人公は何故が皆、男気があって女にもてる。主人公の窮地を救うのが女。斎藤道三は主君の愛妾を奪ったり、かなり非道なことをした。それでも小説では、京都の愛人にも最後まで愛されている。悪人でもそれだけ魅力的な人物だからであろう。
司馬遼太郎さんは、「日本の封建制度を、中世末期にせよ、江戸期にせよ、経済の面もしくは政治の面からすこしでも破ろうとしたものはことごとく悪人として伝えられたことに気がついた。とすれば、悪とはなんと素晴らしいものであるか、そんなことを思いつつ、国盗り物語の構成を思い浮かべたりした」とある。
森新一が「おふくろさん」で歌っている。♪お前も何時かは世の中のためになれよ教えてくれた・ 世の中を大きく変えるには、いたづら程度の悪い人ではなく、義悪人で行かなければならないか。
★平成10年7月26日(金)
★川反ふるさと塾舎
★「秋田の空 世界の空」(2)
★ 鈴木 謙一 氏(全日空鰹H田支店長)
航空会社が政府に陳情していこうという中で、公租公課といういわば税金です。飛行機が運航する時に、どのくらい税金が取られるかというと、それは皆さんの料金に入っております。国際線と国内線は取り扱いが少し違います。
国際線の税金は、一回当たりの平均着陸料は日本で75万円。海外の空港では25万円。日本は3倍です。平成8年度の航空3社が全体で払った着陸料は実にトータルで551億ございました。
その中で着陸料は356億、航行援助施設料が149億、356億のうち航空3社が日本に払った金額が258億です。海外の空港に払った金額が98億です。これを一回当たりの着陸料に直していきますと、75万円と25万円の差になります。
仮に日本の着陸料が25円程度になったとすると、年間170億円のコストセーブにつながります。 ジャンボジェットが一回、成田の空港にいますと95万円取られます。関西空港が91万円、ニューヨークのケネディ空港は35万円、ワシントンダレス空港は実に10万円、ロンドンに至ってはピーク時でも9万、オフ時には7万円です。どこを使って運行するかによって状況が全く違います。
東京・ロサンジェルス間とソウルからロスに飛んだ場合に、この税金の比較をしますと、実に東京からロスに飛んだ方が、ソウルよりも100万円多くかかります。
では何故こういう計算になるんでしょうか。これはひとえに日本の着陸料と航行援助施設料の差がもろに出てしまいます。
又、空港に着陸はしないのですが、カナダ上空を飛びますと電波使用料ということで、約40万円を支払います。これはソウルから飛んだ場合も同じですが、ソウルの空港使用料が19万、日本の方が95万程度で、それにプラス21万6000円の航行援助施設料がかかります。太平洋を横断するにしても日本の着陸料がいかに高いかという典型例です。
東京・ロンドン・ニューヨークという3地点で捉えてみますと、東京を出てニューヨークへ行く場合、ケネディ空港は35万円取られます。日本の場合は着陸料が95万円プラス21万円で116万円。途中通過のカナダで42万払って、米国に降りるときに35万円。合わせて193万円がかかる訳です。これが東京からロンドンまで行った場合どうかといいますと、今度はロシアの上空を飛びまますので、いくつかの国にいわゆる通過料を183万円を払う。そうしますと、ロンドンのヒースロー空港に着陸料プラス空港施設の使用料で314万円程払います。
いずれにしましても、日本からアメリカに行っても200万、ロンドンに行っても300万ちょっと。これがパックとして取られます。
じゃあニューヨークとロンドン間はどうかといいますと、トータル92万円ですみます。日本の着陸料が非常に高いということがおしなべて、飛行機を運行するのにコストがかさんでしまうのが正直なところ、実体でございます。
このように、上空を通過する場合にはそれぞれの国に使用料を払って通過させてもらっているのが国際線の実態です。
ちなみに日本の空はどうかといいますと、国際線の場合、これが無料です。つまり外国から飛んできても日本に降りなければ無料ということです。日本の上空をパスすれば、その航空会社だけがメリットを得ている訳です。日本の空港に降りる飛行機、日本の国内で運行している飛行機には上空通過料の代わりに航行援助施設料がかかってまいります。
日本をベースにしていることが税金が沢山とられてそれが、皆さんがお支払い頂いている料金の中にかなり大きな割合を占めるかということが、おわかり頂いたことと思います。
国際線の場合には競争相手は海外の航空会社になります。こういうある意味では大きなハンディキャップを負いながら、もう一つの面では人件費です。特に東南アジアとの人件費の差、円のレートによっては欧米との差も大きく違ってきます。いずれにしてもコストが異常にかさんでいます。
では国内はどうなっているかと申しますと、東京・札幌間と同じ位の距離なんですが、アメリカのワシントンDCとアトランタシティとの間で、タックス、税金がどんな状況になっているか。ボーイング767、秋田にもよく飛んできます。座席が270席程度の中型機が運行する場合にどの程度の差がでているかといいますと、日本の場合、132万円。アメリカの場合は11万円もしくは9万円。
国内線は国際線とちょっと違いますが、日本の場合はアメリカの8倍、ヨーロッパと比較しても実に3倍です。
平成8年度に航空3社で払った税金は、実に2798億円。全体の収入の23,8%、約24%がタックスに持っていかれています。
いいかえれば皆さんの払われる料金の24%が税金です。それが何のために使われるかといいますと、新しい空港を造る、飛行場を維持管理する。そういったものの財源として使われます。
港とか道路の建設にかける公的資金と違って、投入の比率が全く違います。どうしてかといいますと、歴史が浅い。当初、贅沢な乗り物だということで、お金のある人が自分達で払いなさいという根強い思想があったのかと考えます
アメリカの大手航空会社はデルタが2,7%、ユナイテッドは高々3%の税金ですんでいます。いいかえれば日本は24%、アメリカのお客さんは3%の税金を払って飛行機に乗っているということです。
昭和57年の運賃を100として考えた場合に、他の公共輸送機関、あるいは消費者物価指数、こういったものがどの程度、大きくなったか小さくなったか。平成9年の上期分の実績で割り出したものですが、私鉄運賃が一番高くなって162、以下バス、タクシー、JRが127。消費者物価指数が124になっています。それに加えて航空運賃は93,2というところになっています。他の輸送機関とかなり違うなと読みとって頂けたらと思います。
こういったなかで航空会社は自助努力としてコスト削減、経営体質の強化が大命題です。このままでは国際線ではタックスの問題では全く歯が立たなくなっています。
それから、このまま高い着陸料では外国の航空会社は日本に降りなくなってしまいます。東南アジアの空港に直接行ってしまいます。
これでは日本そのものに不利益になっていく訳で、航空会社では何とかしてほしいと政府に色々お願いをしております。新聞等では着陸料の見直しの方向になっておりますが、これは航空会社の経営問題でなく、それによって航空運賃をもっと安くして海外の航空会社と戦える状況になって初めて、需要喚起をし、航空会社の経営も安定していくものと思います。
来年から運賃が自由化になります。規制緩和が始まり、路線の見直しを航空会社が始めて参ります。それでも秋田はビジネス路線としてレベルの高い路線だと全日空の中では位置づけられています。乗客は去年よりも増えており、私としてはもっともっと増えていただいて減便になった分を取り戻して、お乗り安い、使いやすい状況をつくるために、新しいチャレンジをして行きたいと思っております。
メキシコ(2)
グレイハウンドバスはメキシコシティに向かって南に走る。右手に蒼い海カルフォルニア湾、左の窓の外には砂漠のサボテンの群落が続く。
メキシコは太陽と高原の国といわれる。マヤ、アステカの高度な文明が栄えた国。数多くの文化遺跡が残っている。スペイン人に滅ぼされたが、1821年にスペインから独立し、46年のアメリカとの戦争で敗北し、国土の約半分を失っている。メキシコ革命は、ロシア革命以前にラテンアメリカでの独自の方式で行われた最初の社会革命。1910年から20年までの大土地所有制を温存し、工業化を進めたディアス長期政権の犠牲となった農民、労働者が立ち上がった内線と改革であった。
農業と鉱業が経済的基礎のメキシコは中南米のリーダー格を任じており、外交上は親米だが、キューバとも国交を保っている。
三太郎がメキシコにいるのも、メキシコのキューバ大使館からキューバ行きのビザを貰うためでもあった。
バスの中に二日も一緒だと皆、うちとけて仲良くなってくる。
特に座席が横のホセは十九歳、ひょうきん者で元気がいい。
スポーツは何をやってると聞かれ、レスリングだというと、メキシコのプロレスラーの名前を何人もあげる。日本のボクサーの名前を知っている。アラダという。ファイテング原田のことだった。スペイン語ではHAをあ、と発音する。HARADAはアラダとなる。
人なつっこいメキシコ人は、車内で歌を歌い始める。♪ガンタナメラ ワヒラ ガンタナメラ と軽快なテンポの歌が合唱された。キューバで流行って、中南米諸国にまたたくまま広がった歌だという。ホセがお前も何か歌えという。ダメだというが、彼は立ち上がって、「日本から来た学生が日本の歌を歌いますから、皆さん聞いて下さい」というようなことを言ってしまった。三太郎は困った、こまった。あきらめた。日本の代表として何か歌わなければ、日本男児の恥だと思った。歌う曲目を考えずに意を決して立ち上がった。
乗客は皆拍手。さて、何を歌おうか。大学のコンパで歌ったのは「どんぱん節」ぐらい。後ろの女子大生風の美少女と目があった。
心臓がドキドキしてくる。クラシックジャズを英語では気障だ。 日本で流行っていた歌謡曲を思い出した。(続く)